1500万のポルシェをお客に差し出すという世界〜「獅子のごとく」黒木亮
2016/10/09
おはようございます。2月に向けていろいろと準備をしているケンタ(@kentasakako)です。
さて、今日はちょっと外資系金融の舞台裏を小説から探っていきたいと思います。この「獅子のごとく」という小説の主人公は逢坂というエリート社員です。彼は経営陣に食い込むために、死ぬほど働いています。
さて、彼は外資系金融という夢の舞台を駆け上ることができるのでしょうか?
金融エリートがコンサートや美術館にいく理由。
この小説では、金融エリートの思考回路も少し垣間みれます。
例えば、超エリートの同僚である米本(34才)。
彼はシカゴ大学で機械工学の学士を、そしてウォートンでMBAを取得しているスーパーエリートです。
彼は主人公の逢坂にソニーのCFOを接待することに対して異議を唱えていたのですが、その理由がとても合理的なのです。
「あそことは、今、やれそうな案件もないしさ。接待するだけ無駄だよ。」
「はぁ……」
「逢坂さん、仕事はめりはりつけてやらなきゃ。全部の仕事に全力投球してたら、身がもたないぜ。商売が穫れそうなところだけ重点的にやればいいんだ。……その分、空いた時間で美術館やコンサートに行ったりしたほうがよっぽど客との話題作りになる」
僕にも金融関係の知人友人がいますが、彼らの多くは合理的に時間配分を考えています。それこそ上の米本のように「有効な時間の使い方」を意識しているのです。
そこにきて、僕のように「お金にならないのにブログを毎日更新している」なんていうのは論外のようですよ。
エリートたちからは、概してこう言われるんですよね。
「え、一銭にもならないのに、なんでそんなことしてるの?」
あはは。いいじゃん!笑
おぞましいほどの外資系金融の給与と報酬
さて、この本では「エイブラハム・ブラザーズ」という外資系金融が舞台となっているのですが、もうね、そこの報酬の決まり方がえげつないんですよ。
間もなく38才になる逢坂は、「ゾーン」の中の一人だった。入社以来早朝から深夜まで働き続けてきたが、バイス・プレジデントになってからの4年間の実績は、八尋(東大卒)の方が若干上である。
〜略〜
パートナーになると、最低でも15万ドル(約1850万円)の基本給と、会社の利益の0.25%を受け取ることができる。現在の業績でいくと、年収は400万ドル(約4億9000万円)を超える。
逢坂はたかだか年収3, 4000万円のバイス・プレジデントで終わるか、毎年数億円を受け取るパートナーになれるかの瀬戸際にいた。
確かにこれは「小説」なのでフィクションということは承知していますが、でも、「これに似た」報酬をもらっている企業もきっとあるはずですよね。
はたして、年収4億円ってどんな世界なのだろうか?
マンデートをもらうためなら1500万のポルシェなんか安いわ。
さらに、逢坂は不動産会社の専務になんとポルシェをプレゼントするのです。
相手が公務員であれば、贈賄罪だが、民間人の場合、贈った方が罪に問われる可能性はまずない(貰った方は背任罪になる可能性がある)。
〜略〜
逢坂は、何度か振り返って頭を下げ、表通りに出てタクシーに向かって片手を挙げながら、してやったりとほくそえんでいた。
金にしろ、女にしろ、車にしろ、ひとたび毒饅頭に手を出した客は、必ずマンデートを寄越す。数百億の個人資産を持つ逢坂にとって、1500万円などポケットの小銭にすぎない。
ここで、「マンデート」について補足すると……
「借入れ人が主幹事に与える証券発行の委任。M&Aにおいては、顧客企業から企業売却などの仕事を委託されることをマンデートという。」
つまり、「マンデート」とは、大手顧客から仕事を引き受けることなのです。逢坂は「マンデート」の獲得を成功させるために、ポルシェを「必要経費」として差し出すのです。
こういう世界が、あるのかどうかは分かりません。
ただ、「こういう世界があるのかもしれない」と想像することは非常に重要だと思うのです。
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