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綿矢りさの「夢を与える」を読むと恋愛ボキャブラリーが著しく増加する件

      2016/10/09

こんにちは。ケンタ(@kentasakako)です。

僕は作家として綿矢りささんが好きですが、女性としても大好きです。
つまり、臆面もなく言うと、タイプの女性です。

そして、今年の5月からWOWOWで綿矢りささん著作の「夢を与える」がドラマ化することになったようです。おめでとうございます。

それを祝して、今日はこの「夢を与える」という書籍をご紹介します!

 

夢を与える (河出文庫)

 

 

夢ってそもそも「与える」ものなのか?

 

簡単なあらすじとしては、クォーターの少女である「夕子」がCM出演から国民的アイドルになります。そして、そこからスキャンダルで凋落してしまうまでのストーリーが描かれています。

そして、僕は著者の鋭い問いかけにたじろいでしまいました。

 

「たとえば農業をやるつもりの人が”私は人々に米を与える仕事がしたいんです”って言う?」

「”与える”っていう言葉が決定的におかしいんだと思う。お米は無理で、夢だけが堂々と”与える”なんて高飛車な言い方が許されるなんて、どこかおかしい。大体この場合の”夢”って一体どういったものなのか、まだ分からない。

 

例えば、芸能界入りした方たちは「夢を与える」サイドです。
でも、そもそも「夢」というものは与えるものなのでしょうか?

確かに、「頑張る姿」を見せることで視聴者に勇気や感動を与えることができるかもしれません。しかし、「夢」というものは個人で所有するものです。

上記では「夢を与える」という行為自体が「高飛車」だとさえ指摘しているのです。

そもそも「夢」って、何なのだろう?

 

 綿矢さん、ひょっとしてこの小説を書いている最中に恋愛をしてましたね?

 

僕はこの小説を読んでいて、何かひっかかるものを感じました。

リアリティがありすぎるのです。

綿矢さんは、この小説を書き上げるまでに1年半の執筆期間を要したとのことです。

それを聞いた僕はふとこう思いました。

この1年半の期間、綿矢さんは大恋愛していたのではないだろうか?」

そう思わざるを得かったのです。

というのも、「恋愛中」でしか感じることの出来ない感覚が実に見事に描写されていたからです。

例えば、スキャンダルが発覚した家族の反応を見て、夕子は次のような心境に陥ります。

 

父が正当な権利を主張している姿がなんだかとてもおかしくて、夕子はくすくす笑いが止まらなくなった。正当な権利など、人の世に生きている限り、本当に最低限のところにしか存在しないのに。

 

こんなこと、普通に過ごしていたら考えないことかもしれません。 
さらに、夕子はこのような思考を巡らすのです。

 

母親にも事務所にも刃向かって自分の身体を盾にして愛を守ってきたつもりが、振り向けば何もなかった。実体のないものを守り続けていたと思うと、限りない喪失感が夕子を襲った。しかしそれは苦しみをともなう感情ではなく、麻痺して乾いて、砂のように指の間をこぼれ落ちていくだけの感情だった。

 

夕子は恋愛をしていた。しかしその恋愛が実らなかった時に、彼女が守ってきたものとは一体なんだろうか、と途方もない喪失感が訪れたわけです。

 

溢れ出してくる「恋愛モード」のボキャブラリー

 

そして、まだ「恋愛の描写」は続きます。
次の言葉には、夕子が喪失したものに対する寂寥感が余すところなく表現されているのです。

 

心の空洞はもう埋めようがなく、欲しいものなどもう何もなくて、ただ激しく愛した残滓だけが疲労として身体に残っているだけだった。ときおり、発作的に正晃を恋しく思う気持ちが波のように押し寄せ、乾きひび割れた心を襲う。とたん、心はぬかるみ、乾きのほうがまだましと絶叫し、苦悶は身体にまでおよぶ。

 

恋愛というのは「はしか」みたいなものです。一種の病気なのです。

ただ、こればかりは体験してみないと分からない。

バカみたいな発言ですが、恋というものは「する」ものではなく、「落ちる」ものです。もう恋愛だけは仕方ないですよね。コントロールできないんですもの。しかも、失恋したときの喪失感と来たら、筆舌に尽くしがたいものですよ。

 

ま、でも。

その後の綿矢さんの作品を見てみると、ひょっとして辛い恋愛を乗り越えられたのかもしれませんね。

(どうしても綿矢さんの恋愛事情の方が気になる……)

さて、果たして、夢は「与える」ものなのでしょうか?
本書ではその答えをズバリと指摘しているのです。

ドラマもいいけど、原書もいいですよ。

 

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 - 読書日記

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