ケンタの日本全国スタバ旅 (Starbucks trip)

日本のコンセプトストアを制覇した「スタバ旅行家」のケンタが47都道府県のスタバを巡りまくる!

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読書日記(55)「未必のマクベス」早瀬耕 〜旅って何だろう?と考える。そしてそのうちに旅は必ず終わりを迎える。

      2016/10/09

おはようございます。今日は4時30分に目が覚めたケンタ(@kentasakako)です。

今朝の読売新聞の1面に「産業スパイに10億円の罰則」という記事がありました。
今日はちょっとそれに関連した小説をご紹介します。

早瀬耕さんの「未必のマクベス」という小説です。


未必のマクベス (ハヤカワ・ミステリワールド)

 

この小説は468ページからの森川宛の手紙の「前座」にすぎない。

 

実はこの小説はかなり難解なストーリーです。というのも、裏社会あり、社内政治あり、恋愛ものあり、そして犯罪小説でもあるからです。忙しいのです。
でも、この小説は読後感がすごい充実しています。

裏表紙のあらすじが簡潔だったので、これでチェックしてみましょう。

IT企業ジェイ・プロトコルの中井優一は東南アジアを中心に交通系ICカードの販売に携わっていた。同僚の伴浩輔とともにバンコクでの商談を成功させた優一はマカオの娼婦から予言めいた言葉を告げられる。

「あなたは王として旅を続けなくてはならない」

やがて香港法人の代表取締役として出向を命じられた優一だったが、そこには底知れぬ陥落が待ち受けていた。異色の犯罪小説にして恋愛小説。

 

38歳で副部長なら悪くない?すごい世界だな!

 

この小説の前半では、主人公の中井がとんとん拍子に出世する様子が描かれています。ついには、若くして香港子会社の役員にまでのぼりつめるのです。

 

ジェイ・プロトコル香港は、ぼくが経営企画部に異動した年に副部長の井上と本部長の佐竹が親会社から転籍してきて海外進出の拠点ということを理由に設立した百パーセント出資の現地法人だ。

明確な内示はないが、子会社の役員になるのは副部長職以上だ。38歳で、副部長なら悪くない。本社内で、課長、部長代理、部長、上席部長と、社員でも上下関係が分からなくなる駒を進めるのは、正直煩わしい。その双六さえ、親会社の業績が傾けば、転籍者を受け入れて、また新しい役職が増えるだろう。

 

世間一般的には僕の年代では部長職はともかく課長職まで手が及んでいる人もいます。というか、38歳ってもうそんな年齢なんですよね……

ああ、部下を一人も持ったことのない僕はもはやサラリーマンで成功することは無理なのだろう、きっと。

 

情報を持っている人間が企業に殺されかねない時代が。

 

中井が勤めているのはICカードを製造販売しているのですが、当然のことながらその技術職には電子化の暗号化と複合化の知識が求められます。

しかし、そこは特許を申請したから安心という世界ではなく、自分たちで情報を防衛しなければならない世界なのです。そして、中井は、ある理由から「亡命」をして逃げなくてはならない事態に陥ります。

「亡命」ですよ……

以下の部分は、中井が「亡命」してある使命を果たす前のレストランでのシーンです。

 

ぼくは、自分の掌が、他人にどんな印象を与えているのかを知らない。二年間の徴兵義務があるベトナムの青年からすれば”甘ちゃん”と覚えられているかもしれない。韓国やベトナムの青年は、徴兵に出るとき、どんな気分だったのだろう。平時の徴兵義務とは言っても、その二年か三年の間に、国際情勢が変化して自国が捲き込まれない保証は何もない。
そうなれば、個人の信条や良心とは関係なく、生きた人間に銃を向けなければならないかもしれないのだ。香港の小さな企業の薫事長として握手をした高級レストランの支配人たちはぼくの掌を、金の稼ぎ方も知らないのに金離れだけはいいいと評して心の中では舌を出しているかもしれない。

 

亡命というのは「命を亡くす」と書きますが、実際には「国を亡くす」ことに他なりません。ノンフィクションながらも、亡命をせざるを得なくなった中井の背景におぞましいほどの情報戦が繰り広げられていることを僕は看過できませんでした。

特殊な技能や知識を持つ人は自分でそれをディフェンスしなければならないのです。

 

他人を「羨ましい」と感じない人間は最強の人間かもしれない。

 

さらに、中井は同級生だった伴とこのような言葉をかわします。

 

 

「だから俺は王でも何でもないって言ってるだろ。第一、おまえのことを臣下だなんて思ったことは一度もない。そんなのは、ただの偶然だ」

ぼくが冷静さを失うのに反して、伴は淡々と言葉を続けた。

偶然を偶然としか考えない立場と、偶然にさえそこに隠された必然に怯える立場の違いが、俺が中井に勝てない、何よりの証左なんだ」

〜略〜

「中井には決定的に欠けている感情がある」

「何?」

「俺は成績優秀で、スポーツマンで、みんなから信頼されていた。その俺を中井は羨ましいと思っていたか?」

ぼくは、高校生の自分を思い出そうとする。伴の問い掛けに頷くことも否定することもできない。

中井には誰かを羨ましいと思う感情が欠けているんだよ。だからおまえは恐ろしい。俺はおまえが怖くて虚勢を張っているだけだ」

 

実は、たまにですがいるんですよ、こういう人が。

他人に嫉妬しないという完璧な人間が。

僕は人間の器が小さいのでよく他人をうらやましがるのですが、それがバネになることもあります。でも、結局、羨ましいと思っている時点で「負け」なんですよね。その上、自分が羨ましがっている人間が「羨ましい」という感情を持たないとなれば、もう何をしても敵わないですよ。

同じ土俵で戦うべからず、です。

 

旅慣れてしまう前に一旦、自分の元いた場所に帰ろう。

 

僕はこの小説を読むのに2週間かかりましたが、僕は最後のパートがしびれましたね。中井が秘書の森川に手紙を送るシーンです。この手紙を読むために2週間を費やしたと言っても過言ではありません。

さしずめ、現代版「マクベス」の幕開けとでもいえるでしょう。

 

あ。「産業スパイの罰則」の件について?

そんなの10億円だろうが100億円だろうが、捕まるわけないですよね。

彼らは国家に捕まる程度のIQではないのですから。

 

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