ケンタの日本全国スタバ旅 (Starbucks trip)

日本のコンセプトストアを制覇した「スタバ旅行家」のケンタが47都道府県のスタバを巡りまくる!

*

読書日記(62)「冬の旅」辻原登 〜人生は転落してからが勝負なのです。

      2016/10/09

こんにちは。ケンタ(@kentasakako)です。

さて、僕は来週あたりに高知へ行く予定です。
「坂爪圭吾さんのトークイベント」に参加するついでにスタバ旅をしてこようかと思います。(もはや主従が逆かよ!!)

そして今、僕は絶不調です。
こんな時には「転落小説」を読んでみるのもいいかもしれません。

 

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●「僕の転落記」はリアル。そしてこの転落記はもっとリアル。

僕は落ち込んだとき、リアリティにあふれた小説を読み返すことがあります。
今回はこの「冬の旅」でした。辻原登さんの作品は以前、「寂しい丘で狩りをする」で紹介しました。

 

読書日記(34)「寂しい丘で狩りをする」辻原登 〜「Facebookで1000人とつながるよりリアルガチな友達が一人欲しい」 | ケンタの日本全国スタバ旅(Starbucks trip)

 

 

そして、この「冬の旅」という作品は、主人公の「緒方」が「ふとしたこと」を端緒としてどんどんと人生を転げ落ちてしまう、まさに「キング・オブ・転落記」なのです。

*ちなみに、僕の「ショボい転落記」はKindle出版されています。

 

(ご参考)
僕の人生を1245円で買ってください!〜「第1巻」編 | ケンタの日本全国スタバ旅(Starbucks trip)

 

 

 

緒方は、ある罪で刑務所で服役しますが、冒頭で出所した時の描写が書かれてあります。リアルすぎます。

緒方は久しぶりの電車の揺れに快く身を委ねながら、ズボンのポケットに指を入れて、布の財布をたしかめる。そこには、25,000円、正確には、先程「コンパス時刻表」に660円、切符に950円を遣ったから23,390円があるはずだ。つづいて彼の指は上着の内ポケットの茶封筒に触れる。中には50,000円が、残りはバッグの奥に入れてある。
合計17万なにがし。この金は、5年間の懲役中の作業報酬金として、今朝、出所のさい支給されたものだ。平均時給にして15円。

5年前のこの日、2003年6月8日の夜まで、緒方の懐には450万円の現金があった。しかし、一銭も使わないうちに捕まって、盗んだ金は手からすり抜けていった。

 

5年間の懲役生活で時給15円の作業をして17万円の報酬金を獲得。
そして、その金で「シャバ」に戻る。

実はここからが本当の地獄なのです。「シャバ」は本当に地獄です。

それにしても、このような具体的な数字を描くことは想像力をかき立てますね。僕がもし懲役後出所したら17万円で何をするだろうか、とイマジネーションをフルに使うのです。それがまた楽しいんですよね。

 

●どんどん堕ちていく緒方。ここまで、なのか。

この作品では、SM女王のゆかりや暴力団の油谷や鎖骨フェチの白鳥という濃すぎるキャラクターが登場しますが、やはり僕は主人公の緒方の転落ぶりに目を見はりました。

いや、そんなにすごい悪業を働いている訳ではないのですよ。

なのに……なのに、転落するのです。

そして、ついに緒方はこんなところにまで転落します。門真の携帯電話部門工場に短期採用された際の描写です。

 

「コンベヤーの速度が、先月より速くなっているような気がする」

昼食時間は実質20分ほどしかない。メニューはたいていカレーライスか中華丼で、そのどちらかを載せたトレイをテーブルに置いて席に着いたとたん、トレイが流れ出すようにみえ、緒方はあわててトレイの端をつかんだ。
夜勤のときは昼間、会社から支給された遮光用の黒いカーテンを締め切って眠った。

こ、これは……恐怖以外のナニモノでもない。
ちなみに夜勤というのは、午後3時20分〜午前0時25分までの勤務。
日勤というのは、午前6時〜午後3時05分までの勤務。

どちらも地獄だ……

そして、次のように続きます。

 

 

三ヶ月たった。緒方は痩せ、顔色は青く、いつも目を充血させていた。ある日、夜勤に就いていた彼は、居眠りのはてにベルトコンベヤーの上に昏睡し、200ボルトの電流の流れている導線に触れてしまった。感電死は免れたが、腕から肩にかけて2度から3度のやけどを負った。会社は彼の負傷よりコンベヤーが止まったことの方を重大だと考えた。

 

 

ここで見逃せないのは、会社側の対応です。

緒方を既に人間として見てはいないのです。作業工程のマシーンにすぎないとバッサリと切り捨てています。過酷な労働により大けがをした労働者よりもコンベヤーの作業効率が落ちてしまったことを気にする、今の資本主義経済を象徴している気もします。

 

●「おれの最初のつまずきは何だったのか?」

 

この小説では、最後にふと緒方がこう漏らすのです。

「おれの最初の躓きは何だったのか?」

そして、僕も時々こう思うのです。

「僕の最初の躓きは何だったのか?」

 

でも。

 

そんなものは分からないのです。
人生はいとも簡単に転落するものですから。

人生は転落してからが勝負なのです。

 


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