読書日記(15)「かわいそうだね?」 綿矢りさ
筆者の綿矢りささんは、「インストール」という作品で19歳にして芥川賞を受賞した若手作家です。(個人的には「夢を与える」が、私にとってのベスト作ですが、それは後日ご紹介します)
ということで、今日は「かわいそうだね?」という本をご紹介します。
概要はこちらをご覧下さい。
「かわいそうだね」(文藝春秋より)
綿矢さんの作品はどれも「ワードセンス」つまり使われる単語がとても的確なので、私のボキャブラリーの在庫を増やしてくれます。
そして、今回の短編(「かわいそうだね?」と「亜美ちゃんは美人」)については、人が人に対して「興味、関心」がない、という意味を考えさせられました。
以下のシーンは、主人公の女性( 樹理恵)が交際している男性の元カノ(アキヨ)とちょっとした言い争いをしている箇所です。
「樹理恵さん、私はね、あなたに興味がないのよ」
アキヨの声は初めて三十になった女の人相応に、低く、ものやわらかな響きを帯びていた。
「分かってる。だから許せなかった。自分の目的を遂げるためだけに必死になって、私が苦しんであがいているのを無視している。」
「無視してるわけじゃなくて、本当にただ、興味を持てないの。そんな余裕がないの。ねぇ、どうやったら明日も生きられるかを真剣に考えなくちゃいけない状況に陥ったことってあなたはある?」
(133ページより)
実は、「無関心」というのは最大の武器かもしれないと思いました。
「好き嫌い」という感情を抱かれる方がまだましです。何故なら、「人間として見られているから」です。
そこにきて、「無関心」というのは「好き嫌い」という次元まで達していないのです。そこに受け手側の感情が動いていないから。
だから、僕は人から「ごめんなさい。私はあなたが嫌いなの。」と言われるよりも、「ごめんなさい。私はあなたには関心がないの。」と言われる方が辛いです。
せめて、嫌いになって……。
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