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近代の日本を語るときに読んでおきたい船戸与一の「風の払暁(満州国演議1)」

      2016/10/12

亡き船戸与一さんの大作が全9巻完結しました。その名も「満州国演義」。
最近は文庫本になって書店に置かれていますね。

今日はその1巻である風の払暁(かぜのふつぎょう)を読んだのでレポートしたいと思います。この本、近代史の勉強になるんですよ。

難解な本だとお思いでしょうが、これ意外と読みやすいんですよ。
歴史の教科書を読んでいる場合ではありません。学生はこの本を読んで歴史を勉強するべきですよね。

 

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「風の払暁」のあらすじ

この第一巻では張作霖爆殺前後の歴史的背景を描いています。
なんだか難しい本だという予感はしたのですが、船戸さんの手腕でとても読みやすいですよ。やはりテンポがいい。センテンスが絶妙。長過ぎず短すぎず。

あとネーミングが分かりやすいです。
主人公の4兄弟の名前が「太郎」「次郎」「三郎」「四郎」ですよ。記号か!

 

ということでこの本のあらすじです。

第二次大戦前夜。麻布・霊南坂の名家に生れながらも外交官、馬賊の長、陸軍士官、劇団員の早大生と立場を全く異にする敷島四兄弟が、それぞれの運命に導かれ満州の地に集うとき……中国と朝鮮、そして世界を巻き込む謀略が動き出そうとしていた。相克する四つの視点がつむぎだす著者渾身の満州クロニクル、いよいよ開幕!

読書メーター」より抜粋

ちょっと補足します。
敷島家の4兄弟(太郎、次郎、三郎、四郎)が主要登場人物なのですが、それぞれの立場(外交官、馬賊、軍人、学生)から満州が描かれています。そう、この小説の舞台は満州なのです。20世紀初頭の満州は激動の時代になりますが、敷島4兄弟がその中でどう立ち向かうのかがポイントになります。

 

船戸ワールドから見る高学歴の罠とは?

この小説から船戸さんの名言をピックアップします。

あまり本筋とは関係がない場面です。
敷島家の長男である太郎は東京帝国大学を出ているエリート、そんな太郎を称してスパイ的存在である徳蔵はこう言います。

「太郎くんは東京帝大の法学部を出た秀才だ。頭がいい。だがね、頭のいい人間には重大な欠点がある。まず些細なことでくよくよと悩み、知力という虚しいもので解決できると信じようとする。それから狭量なことも欠点のひとつだ。笑って済ませられるような事態もやけに重要視するんだよ。秀才というものはだいたいそうなんだ。 」

これよく分かります。
周りの秀才を見ていても、「なんでそんなことで悩むねん」といったことがよくあります。知力が邪魔になることもあるのです。

 

女将が言う。「軍人さんは世間を知らない」

さて、戦争について民間人の意見が的を得ているんですよ。
この小説では小料理屋の女将の雪子が核心をつく言葉を放ちます。

「軍人さんは満蒙領有一点張り。世間を知らないせいね」
雪子が笑みを浮かべながら言った。
「ここのお客さんはいまは日本人ばかりだけど、水商売だっていずれ支那人もお客にしなきゃやってけない。満蒙を領有したらかならず支那人の反感を買う。それを避けるためにも五族協和の王道国家が必要。満蒙領有なんて軍人さんの面子のためだけでしょ?あたしたち満州に住む民間人のことも考えてくれなくっちゃ厭」

当時の国際情勢としては「満州」という領土をどこが占有するかが問題になっていました。希望は満州にある時代です。何より満州には豊富な資源があるのです。満州は日本が領有するべきか、それとも独立国へと変貌するべきか。

そんな議論のなか、この女将はすごいことを言いますね。
「軍人さんは世間を知らない。」

 

さて、第二巻はどんな展開になるのでしょうか?
ぼくは個人的に四郎が気になります。
早稲田から上海の有名大学に留学している四郎。彼は馬賊である兄次郎に憧憬の目を向けているのです。気になる。

 

 

(船戸与一の関連記事)船戸与一さん追悼。あなたは隠れた名作「金門島流離譚」を知っていますか?

 

 

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