ケンタの日本全国スタバ旅 (Starbucks trip)

日本のコンセプトストアを制覇した「スタバ旅行家」のケンタが47都道府県のスタバを巡りまくる!

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読書日記(21)「母の遺産」 水村美苗

   

この小説は、個人的に好きな作品です。もともとは読売新聞での連続小説だったのですが、本をパラパラめくるだけでも「面白そう!」と引き込まれるものがありました。何故なら、私の「好きな要素」を3つも含んでいるからです。

「この3つの要素を持っている小説」が大好きだ!

1つはお金についての具体的な金額を記述している点。例えば、肉親からの遺産額が鮮明に描かれているのです。

もう1つは、「人生観を考えさせられる」ということ。この小説の場合、「生き続ける」すなわち「老いる」ということがいかに残酷かを再考させられました。

更に、この小説ではもう1つの要素も含まれていたのです。

それは、作家としての「表現力」です。

僕が好きな表現力ってどこ?

「素晴らしい表現力」

今日は、その中でも秀逸な部分を2つピックアップしてみました。

まずは、主人公の美津紀が、介護に疲れて母の死を願っている時のシーンです。

そこに医者の方から、こともあろうに、胃ろうの話を出してきたのであった。10月に入ってからのある金曜日で、病院に着くと、いつものようにコンピューターに向かっていた医者に呼び止められ、「中心静脈輸液」を注入できる血管にも限度があり、そろそろ胃ろうを増設したほうがよいと言われた。

美津紀は自分の耳を疑った。

母の尊厳死協会の書類も見せたうえ、母も家族も経鼻や胃ろうを望んでいないことを明確にしたはずであった。

美津紀は言葉を失って医者の顔を穴の開くほど見た。

あの時、医者は「もちろんです、了解しました。」と応えたはずであった。

この医者は記憶喪失者なのか。

医者に対する悪意的な表現がひしひしと伝わってきます。

特に太字の部分はちょっと笑いすら誘っていますよね。

もう一か所、私の好きなシーンをご紹介します。

奈津紀(姉)のお金がきたからといっても、少しは余裕のある生活をしたいので、特許の翻訳は今まで通りぐらいは続けるつもりであった。

ただ、それ以外の時間の使い方はまだ考えていなかった。

去年の暮れから体調が以前より悪くなってしまったので、まずは治療に専念したいとしか思っていなかった。

美津紀は茶色くなった文庫本をもう一度見た。

人間は自分がしたいことをするために生きるわけではない。大人になるというのは、したいことをするのを諦めるのを学ぶ過程でもある。

だが、納得できずに断念した記憶はしこりのように残る。美津紀のなかで、教授からきた「ちょっといい話」を断らねばならなかったのは、しこりとなって残っていた。「ちょっといい話」を遅ればせながら蘇らせようと試みるのも悪くはないかもしれない。最初の数章を翻訳してみて、それなりに自分で満足がゆくものができたら、あの出版社に見せにいくのはどうだろう。

離婚した女が趣味をビジネスに転じたりして、華々しく生を謳歌する話は新聞や雑誌でたまに紹介されるが、そんな大それた再出発は望んでいなかった。

ただ、治療に専念できれば、少しは体力が戻ってくるだろうし、体力が戻れば気力も戻るだろう。そうすれば、今さら偉大なことはできなくとも、何かはできる。あの本の翻訳なら少なくとも試みられるような気がする。

「人間は自分がしたいことをするために生きるわけではない。大人になるというのは、したいことをするのを諦めるのを学ぶ過程でもある。」

僕もひょっとしたら次のライフステージで「介護」という現実に直面するかもしれません。そんな時、「自分がしたいこと」など優先できないのです。

そして、最後に一言。

「老いは怖い」

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