ケンタの日本全国スタバ旅 (Starbucks trip)

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「教団X」は単なる駄作なのか?いや、「神の領域」への挑戦状かもしれない。

      2016/10/12

やっと中村文則さんの「教団X」を読了しました。
この「教団X」、実はAmazonのレビュー点数がとんでもなく低いことで有名です。

(参考記事)【アメトーーク!読書芸人】『教団X』のamazonレビューがヒドいことになっている件 – 雨が多い街だね

本作は、「アメトーーク」という番組でかなり大々的に取り上げられ、売れまくっていたようですが、ぼくはこの小説を読んでこう思いました。

ああ、この本は挫折率が高いだろうな。

567ページの大作、あなたは最後まで読める自信ありますか?

 

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教団X」の簡単なあらすじ

まずは、簡単なあらすじを書いてみます。

主人公の楢崎は失職し無聊をかこつ生活を送っていた。
そんな折、立花涼子と出会い交際することになったが、立花は急に姿を消した。楢崎は立花を探すために友人の探偵、小林に捜索を依頼することになる。
そこで突きとめたのは松尾正太郎という思索家であった。楢崎は松尾率いる集団と対をなす「教団X」という謎の宗教団体にアプローチする展開になる。最初は単なるセックスカルト集団とおもわれた「教団X」だが、その内実は意外なものであった。

うーん、自分で書いてみても「セックスカルト集団」のところがやはりひっかかりますね。なんだそりゃ。

 

ここから先はネタバレになりますので要注意

この小説の読み応えがある箇所はぼくは2つあると思うんですよね。
一つ目は、「教団X」のナンバー2である高原の手記。

彼は、教団Xの幹部なのですが、実はテロ計画を起こすんですよ。教祖をだまし、信者たちを煽動する計画を立てます。なぜ高原はそのような計画を立てたのか?ぼくは高原のバックボーンにその解を見いだした気がしました。

彼は過去にアフリカで武装集団に誘拐された経験があるのです。

私は恐らく、外国人として人質になるのだった。金を払うのはNGOだろうか。国だろうか。もし交渉が失敗したら。私は考える。私はすぐ殺されることになる。この土地での人間の命の価値は低い。なぜなら、この国では人が死に過ぎていた。飢えで死に、病で死に、内戦で死に、暴動で死ぬ。この国では人が死ぬということがとりわけ珍しいことではなくなっている。

(366ページ)

一度「人の命の価値が低い」経験をすると、人生観がまったく変わる。
日本でしか生活していないと「命の価値」について考える機会が少ないので、今回の読書を通じて考えさせられました。

 

「教団X」の教祖の過去は必読です

この567ページにわたる大作は「教団X」の教祖である沢渡の過去を読むためにあると感じました。つまり、480ページくらいは「伏線」にすぎないのです。
この沢渡の過去はもはや「神の領域」に達しているんですよ。
なぜか?
彼は医師として特殊な経験をしているからです。

戦後が過ぎていき、医師として働き始めた頃、一つの特定された情欲に囚われた。それはいつも、女の白い身体にメスを入れる瞬間に起こった。麻酔で意識を失った女の身体を前に私はいつも喉が渇き、陶酔したように意識が薄れた。

……私の手によって、この目の前の存在はどのようにでもなるのだということ。

怖いけど読み進めてみましょう。

私が一センチ多くメスを動かすだけで、その女の動脈が切れ、血が、命が噴き出す。女の皮膚にメスを入れていく。女の身体が開かれ、隠されていた身体の内部の活動をこの目で見る。今、この女の人生、運命、そしてこの女が助かることで今後展開していく全ての物事が私の意志に握られている。その全体を意識した時、私のメスの先はいつも微かに震えた。

……私の性器は、その度に勃起することになった。

なかなか暗い情景ということになる。メスを手に女の身体を見ながら、勃起していく青白い青年。

この全能感は医師でないと味わえないでしょう。
そして、沢渡の「告白」はなおも続き、唖然とさせます。
しかし、これこそが「教団X」の醍醐味なのです。

「教団X」を楽しめた人はこの小説も好きなはず。

この小説を読んで、ぼくは3つの作品を想起しました。
一つは中村さんの作品である「土の中の子供」。

これは「虐待」をテーマにした壮絶な小説なのですが、中村さんのリアルを伝える筆致が心に響くのです。今回の「教団X」は性行動の場面が生々しいんですが、「土の中の子供」は虐待の描写が生々しい。泣きそうになりました。

(参考記事)虐待経験がスゴすぎて読み進むのが怖い本〜「土の中の子供」(中村文則著)

2つ目は、「メタモルフォシス」。これは去年に芥川賞を受賞した羽田圭介さんの小説なのですが、テーマがSMなんです。もう羽田さんがSM好きなんじゃないかと思われるほど、SMのリアルが伝わる作品。

(参考記事)芥川賞の羽田圭介さんの「メタモルフォシス」が壮絶すぎる件 

3つ目は、「中尉」。医師の全能感というストーリーではないのですが、戦時中の医師という点ではこの小説も楽しめます。医師という職業はやはり特別なんですよね。

(参考記事)「中尉」(古処誠二)を読んで、クヨクヨ悩んでいる自分に喝を入れてみた! 

 

もし「教団X」を挫折せずに読めたならこの3作品も読んでみてはいかがでしょうか?

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