読書日記(22)「我が志アフリカにあり」 島岡由美子
タンザニアの「革命児」と言えば、日本人の旅人の間でめちゃくちゃ有名のようです。先日、私も友人からこの本を勧められて読みましたが、「革命児」は生きている次元が違うと痛感しました。
ちなみに「革命児」は日本人です。そして、彼の「志」というのがもう途轍もないのです。もう一度言います。次元が違うのです。
●「革命児」のすごさ
彼が何故アフリカへの大志を抱いているのか、を端的に記しているのが以下の部分です。
「ギリギリの線上で生きている貧しいアフリカ人はいっぱいいるさ。でもそういう連中がかわいそうだからって、外国人がよく考えないで『与えることの悪』の方が大きいのさ。そんなことよりも、何とかアフリカに働く場を作って、貧しい人々が働き、自分達で家族を養っていけるようなしくみを作り出していくことが大切なんだ。
援助や恵んでもらうことに慣れきったアフリカ人が、乞食根性を捨て、対等な同じ立場の人間として自立する。
自分で働いて生活し、家族を養い、自分達で生活を向上させる。俺はそういう実践力のあるアフリカ人を育てる手伝いをしたいんだ。」
(43ページ)
もはや、考えていることが政府レベルなのです。いや、国連レベル?
それを一人でやってのけようというのですから、ある種の畏怖を感じます。
●「革命児」のお父さんのすごさ
そして、その「革命児」を育てたお父さんの思考回路も凄まじいのです。
そんな父が、目標をアフリカに定めた息子に言い始めたことは、
「定職につくな。日本で仕事をするな。免許や資格をとるな。結婚はするな。」
この四点だったそうだ。
島岡さんからその話を聞いたとき、私は「この教訓は一体どういうこと?普通の親が言うことと反対のことばかりじゃない。」と驚いた。
父は繰り返し、島岡さんにこう言ったらしい。
「定職に就くな。ひと月いくらの金で自分を売るな。」
「お前の力量なら、日本で仕事を始めれば、すぐそれなりのことができるだろう。しかしそれを始めたら最後、仕事も面白くなり義理もできる。そして気がついた時には、そのしがらみにがんじがらめになって日本を出るに出られなくなる。」
「免許や資格に頼るのは本物の人間の生き方じゃない。島岡強という人間一人の重みだけで、世界中どこでも勝負できなければ本物とは言えないんだ。」
「絶対に結婚はするな。お前は志のために命をかけようとしている。志のために死んでいく男には、自分で死んだ後に悲しむ者を残していく必要はない。」
(165ページ)
この4点セット、ほとんどの日本人が熱望していることではないでしょうか?
そして、それを一蹴する「革命児」のお父さんの発想もまたスケールが違うのです。
●そして、「革命児」の奥さんのすごさ
さらに、「革命児」の奥さんである著者もまた凄いのです。彼女が「革命児」と共にアフリカに渡った時にいろいろな苦難があったのですが、革命児はそんな困難など全く気にせず、次のような指摘をする訳です。
私が一番苦しかったのは、そういったことよりも、「お前は人間に対する差別意識を持っている」とか、「日本にいるとき、お前が何にプライドをもっていたか知らないが、お前がよりどころにしていた条件をすべてはずしてしまったら、今のお前はなんの力もない人間なんだぞ。もっと謙虚になれよ。」という指摘を受けたときだった。
(49ページ)
この言葉、心に刺さりまくります……。
このように、この本ではいろいろな至言が出てくるのですが、どの言葉も重みがあります。
この本を読み終わった後、僕はこう思ったのです。
「僕、スケール小さすぎるわ。」
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