無職が金原ひとみの小説を読むとチクチク刺さる。
2016/10/12
先月、金原ひとみの小説「軽薄」を読みました。
ストーリー的にはけっこうきわどい設定だったのですが、金原作品ってところどころにチクチクと刺さるものがあるんですよ。
特に、無職には……。
今日はそんなおはなしです。
金原ひとみ「軽薄」のあらすじをざっくりと。
主人公であるスタイリストのカナは、イタリアの服飾ブランドの日本支社に勤める夫と8歳になる息子との三人家族。しかしカナにはある過去がありました。16歳のときから2年間、「破滅的な」関係をつづけていた男がいたのです。その状態を打開するためにカナは浮気相手と逃亡しようとします。しかしその男は、ストーカーとなり、ついにはカナはナイフで刺されます。それがきっかけとなり、カナはイギリスに留学することに。そこで夫と出会いました。
なに不自由ない夫婦生活を送っていたところ、ふと危険な関係が生じました。
姉の息子・弘斗と肉体関係を持ってしまったのです。弘斗は19歳の大学生。
カナは禁断の恋愛に突入していったのです。
スポンサーリンク
「軽薄」の評価が低い理由
この「軽薄」という小説は意外と読者からの評価が低いようです。
個人的にはこの小説を読んでいて、正直かなり読みづらいという実感を持ちました。
ふだん、パソコンで文章を読むことが多いこともあり、区切りがない文体にかなり苦戦しました。
でもそれ以上にぼくは読後感のザラザラ感は拭えませんでした。
主人公であるカナが最終的に「ある決断」をするのですが、その決断がタイトル通り「軽薄」なのですよ。その決断でどれほどの人を不幸にすることか……。
詳しくは小説を。
無職の人はこの言葉を聞いて奮起しよう。
さて、筆者の金原ひとみは東日本大震災を機に2011年に岡山へ移住。
その後、フランスへと海外移住を果たしました。
ぼくは金原さんについての見識はさほどないのですが、フランスに移ってから作風がおおきく変化したと思います。
ぼく個人的に金原作品で一番好きな小説は「マザーズ」ですが、その後「持たざる者」あたりからフランス人の価値観が見え隠れしています。
一つには強い個人主義的な思考、そして働いていない者に対する厳しい視線です。
たとえば、「軽薄」にはこのような描写がありました。
これまでの男に対して抱いてきた気持ちと、弘斗に対するそれとの違いは尊敬の有無かもしれない。仕事を持っていない男を、女は尊敬できないのかもしれない。例えば、我が子を尊重することはできても、小さいうちは尊敬することができないように、私は弘斗の事を尊重はしているけれど、尊敬はしていない。
また、著書「持たざる者」にはこのような記述があります。
イギリス人は男も女も、知り合ってすぐに「仕事は何してるの?」と聞く。
そして、就労できないビザだと話すと、可哀想にと皆口を揃えるのだ。
就労できない人間は、まだ学校に通っている子供たちと同じように無力なもので、大人としての人権を剥奪されているかのように捉えられているのがひしひしと伝わってくる。
人生には「働けない局面」というものがでてくるかもしれません。
ぼくもいま、働きたいけど働けないというジレンマに悩んでいます。
じつは「働けない」というのは実は苦悩をともなうのです。
それは大雑把にいうと、社会に所属できていない孤立感や無力感。
そういうものがぼくを苦しめるのです。
(参考記事)「無職ブロガー」の耐えがたき不安
「とにかく無職を抜け出さなければ」と金原さんから叱咤激励を受けた気がしました。
はたらきます。